1962年 フランス・イタリア合作映画 ジョゼフ・ロージー監督
(Eva)
”Willow Weep For Me”(柳よ泣いておくれ)というジャズソングがある。 アン・ロネルが作詞作曲した切々たる悲恋歌であり、 ライヴで歌うときは、「女が作った、女のための恨み節」などと 前説をしている。 この歌が象徴的に使われた映画が、 ジャンヌ・モローが魔性の女に扮した『エヴァの匂い』である。
ジャンヌ・モローは老け顔であり、グラマーでもないが、 強烈なセックス・アピールがある。 男を見下し、ひれ伏させ、そして満足させる女エヴァを、 単なる美人が演じたら、全くつまらない。
エヴァがご執心なのが、ビリー・ホリデイの”Willow Weep For Me” 男と泊るホテルで、徐にレコードを取り出し、 ターン・テーブルに乗せる。ビリーのねっとりとした声が拡散する。
本作でフィーチュアされるビリーのヴォーカルは、もう一曲”Loveless Love”がある。
JAZZYなスコアはミシェル・ルグラン。全編を頽廃的なムードが覆う。
エヴァがレコードを叩き割るシーンがある。
男を手玉に取る女が、アン・ロネルの歌詞に自身を置き換えたのだろうか。
ロージー監督は赤狩りでハリウッドから逃れ、ヨーロッパで秀作を遺した才人。
ハリウッド時代の『緑色の髪の少年』(’48)は
ナット・キング・コールの”Nature Boy”が印象的な一作。
観かえしたい作品が、たくさんある映画作家なのだ。
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