2012年 ポーランド・ポルトガル・仏・英 合作映画
アンジェイ・ヤキモフスキ監督
(Imagine)
白状を持たずに歩ける盲目の男。 彼に惹かれる盲目の女。彼らを取り巻く盲目の子ら。
ポーランドのアンジェイ・ヤキモフスキが”反響定位”を題材に、 実際に盲人である子どもたちを起用した稀有な作品。 きわめて寓話的かつロマンティックなところが興味深い。 リスボンにある、古風なたたずまいの診療所。 古い修道院が無償で建物を提供し、 世界各国から集まった視覚障害者たちに治療や トレーニングを行っている。 ひとりの若い男がやってくる。白状を持たず、 全く目のまえの状況を把握しているように振る舞う男イアン。
本作を観て初めて知った”反響定位”という方法。 イアンは舌を鳴らし、指を鳴らし、白状なしで自在に歩く。 端正な面差しをよく見ると、額や頬に細かい傷や痣が見受けられる。 ”反響定位”の会得者であっても、時には物にぶつかったり、 転んだりしている証拠だ。子らはイアンに興味津々、 「あの先生、ほんとうは見えるんじゃない?」と。 ブロンドと美脚をもつ孤独な外国人エヴァも、 イアンの自由さに憧れはじめる・・・
ポーランドはアンジェイ・ワイダを始めとして、”ア”の項で紹介した異色傑作 『アンナと過ごした4日間』のイエジー・スコリモフスキ、 クシシュトフ・キエシェロフスキ他、 名作・名匠が名を馳せる映画大国であるが、 自国での映画製作が主流。
ポルトガルに各国から俳優を集めて 映画製作をしたポーランド人作家は、ヤキモフスキが初めてではないか。
美加の生涯の一冊にサン・テグジュペリの『星の王子様』がある。
「本当に美しいものは目に見えない」という言葉を、
この映画は想い起こさせてくれる。
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