1940年 アメリカ映画 ジョン・フォード監督
(The Grapes of Wrath)
見晴るかすオクラホマの広大な地、一本道を細身の男が歩いてくる。 聞こえてくるのは”A-Tisket A-Tasket” エラ・フィッツジェラルドの出世曲だが、 ここではインストゥルメンタルで。 ヘンリー・フォンダ扮する主人公のトム・ジョードは、 物怖じしない態度と不敵な物言いにより、その生きざまがわかる。 気の強い正義漢のため、損な役回りの男。
土地を追われ、旅から旅を余儀なくされる 貧しい農民ジョード一家の長男であるトム。
祖父、祖母、父母、長女と夫、次男、次女、三男、伯父・従弟に、 ジョン・キャラダイン扮する元説教師ケイシーを加えて総勢13名での出発。 今にも壊れそうなトラックの荷台からこぼれ落ちんばかりの家族たち。 果たしてカリフォルニアまで辿りつけるのか、 職を得られるのか、全ての観客が不安に駆られるはず。
長いまつげに縁どられた、まさに”Star Eyes”のヘンリー・フォンダが、 容貌にそぐわない無学で愚直な男ジョード役を切望し、演じきった。 ラストに近いモノローグでのクロース・アップには、 目元の美しさと相まって理想を追い求める情熱がほとばしる。
ジョン・フォードは本作でアカデミー監督賞、 巨体の母に扮したジェーン・ダーウェルは助演女優賞を受賞。 この欄で紹介するフォード監督作品としては 『アパッチ砦』に続く2作目であり、 彼の作品をすべて観ようと決意させた 大傑作『わが谷は緑なりき』までは、おお~遠い道のり。
そう、スタインベック作品の映画化では、 ジェイムズ・ディーンの数少ない主演作『エデンの東』も忘れ難い。 こちらは秋ごろ観なおせるかなあ・・・
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