No.376『チャイナタウン』大橋美加19 時間前読了時間: 1分1974年 アメリカ映画ロマン・ポランスキー監督『チャイナタウン』(Chinatown)10代で本作に出会わなかったら、我が映画人生は始まらなかっただろう。新宿の小さな名画座で初めて観た、せつなく後味の悪い、おとなの映画。フェイ・ダナウェイの哀しい蛾眉。名匠にして怪優であるジョン・ヒューストンの究極の下司ぶり。ジャック・ニコルソンは見事に喰われ、狂言回しに陥り、ポランスキーは手下のチンピラ役で怪演。バート・ヤング、ダイアン・ラッドなど味のあるバイ・プレイヤーも揃う。1930年代後半のL.A.水利権問題を背景に、私立探偵と謎めいた人妻、彼女の父親である権力者の愛憎が絡み合う。凝りに凝った当時のファッション、”I can’t get started””The way you look tonight””Easy living”など時代を彩るジャズソング、何より”色”の統一感が絶品であり、映画という総合芸術に耽溺する。束の間の情事に微笑みを取り戻したフェイ・ダナウェィの艶やかな横顔が忘れられない。
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