1959年 フランス映画
ロベール・ブレッソン
『スリ』(pickpocket)
これほど微細にスリの手口を見せつけられながら、ラスト・ショットを観て、
"スリ"が物語のテーマではないと知らされる!
果たしてブレッソンは意図的であったのか?
それとも偶然の流れか?
主人公とおぼしき暗い目つきの自堕落な ミシェルは、
最初の間違いが罰せられなかったことで高を括る。
ミシェルの病身の母の世話をする隣人の貧しい娘ジャンヌ。
ジャンヌが美しく心根も良いと観客は気づくが、主人公は気づかないのか、気づきたくないのか。
人生は目に見えない何かに操られ、流されてしまうものか。
流されないために、繋ぎ留めておかねばならないものは何か。
「自分で見つけろ」と言わんばかりのブレッソン、ああ、酷な人…
本作後、さらに冷徹かつアーティスティックなアプローチに磨きがかかった名作『少女ムシェット』('67)は"シ"の項で掲げているので参照あれ。
ヌーヴェル・ヴァーグの監督たちより世代が上でありながら長生きしてくれたブレッソン(1901〜1999)ゆえ、遺作『ラルジャン』('83)は幸いにも公開で観ることが叶い、
劇場パンフレットも大切に保管している。
採録シナリオ付だぞ~!!!!!
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