大橋美加3月20日No.324『醜聞/スキャンダル』1950年 日本映画 黒澤明監督『醜聞/スキャンダル』真実を貫くことの難儀さを若き黒澤が描く。三船敏郎扮する新進画家と山口淑子演じる人気歌手が、あらぬ醜聞を立てられ、志村喬扮するショボくれた弁護士が名誉挽回をと売り込みに現われる。ドラマの焦点がずれていき、物語より主題重視とわかってくる。黒澤組の名脇役・千石規子が今作でも苦労人女性を生々しく演じ、リアリティを添える。"尊い犠牲"という言葉を使わずにはいられない展開が哀しいが、桂木洋子の浮き世離れしたエンジェリックなキャラクター設定により、安易なお涙頂戴を回避している。「お星さまのような子なんだ」「星が生まれるのを見た」という三船のセリフが心に残る。一点の曇りも無いのは夜空の星だけか。現実世界に美しいものは無いと、黒澤は突きつけたかったのだろうか。
1950年 日本映画 黒澤明監督『醜聞/スキャンダル』真実を貫くことの難儀さを若き黒澤が描く。三船敏郎扮する新進画家と山口淑子演じる人気歌手が、あらぬ醜聞を立てられ、志村喬扮するショボくれた弁護士が名誉挽回をと売り込みに現われる。ドラマの焦点がずれていき、物語より主題重視とわかってくる。黒澤組の名脇役・千石規子が今作でも苦労人女性を生々しく演じ、リアリティを添える。"尊い犠牲"という言葉を使わずにはいられない展開が哀しいが、桂木洋子の浮き世離れしたエンジェリックなキャラクター設定により、安易なお涙頂戴を回避している。「お星さまのような子なんだ」「星が生まれるのを見た」という三船のセリフが心に残る。一点の曇りも無いのは夜空の星だけか。現実世界に美しいものは無いと、黒澤は突きつけたかったのだろうか。
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