1961年 日本映画 大島渚監督
『飼育』(The Catch)
いきなり、黒人兵士が山道を連行されて 行くシーンから始まる。
血まみれのその足には罠が嵌められている。
様子をみて嘔吐するセーラー服の娘。
汗と泥をまとった半裸の子どもたち。
クロース・アップが緊張感を煽る。
黒人兵を”飼育”することになった村人たち。
おとなしく繋がれ、白いヤギの乳を飲む黒人兵。
黒白画面に映し出される、
黒光りする肌と黒糖飴のような瞳。
”クロンボ”に興味津々の子どもたち。
三國連太郎扮する暴君の地主が大いに目立つが、
病床からすべてを見透している
沢村貞子扮する妻も凄味がある。
監督夫人の小山明子は美しき疎開者を演じ、
地主の毒牙が向けられる。
終盤にさしかかる座敷のシーンの長回しは臨場感あり、
思わず乗り出してしまう。
棺に土をかけていく俯瞰に、
手、手、手が交錯するシーンも幻想的。
誰の手が誰を傷つけ、
誰の手が誰を殺めたか、
わからない恐ろしさが宙を舞う。
何事もなかったかのように
祭の相談をする地主たち。
十代の八郎少年の背だけが、
抗うように画面の隅を占める。
彼はこの村でこの先、
どうなるのだろう。
明治生まれの祖母が
いつだったかぽつりと云った、
「日本が戦争に勝っていたら大変なことになっていたよ」
というひとことが背筋をよぎった。
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