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執筆者の写真大橋美加

No.298『シテール島への船出』

更新日:2023年10月8日

1984年 ギリシャ映画 テオ・アンゲロプロス監督

(TAXIDI STA KITHIRA )


こんなに素晴らしいファースト・ショットだったか!


幼い少年がドイツ兵をからかって追われ、逃げる。

くるくると迷路のように家々の間を抜け、一軒の扉を引っ張るが開かない。

走り、別の扉を必死で引く少年。やはり開かなく、膝を抱えて座り込む…


40年近く前に劇場で観たきりの本作を、感動に包まれて観なおす。



革命・亡命・帰還・再追放。

険しい地図さながらの顔面を掲げた老人と、

時の止まった老妻。

愛は萎びた林檎、

されど腐ることはない。


凝った奥深い作品ではあるが、

"魂の拠り所”の有無は誰にもわかるはず。

悲劇的な絵画のような

アンゲロプロス・ワールドに耽溺して欲しい!

一度だけ、アンゲロプロス監督にお会いしたことがある。

"長回しの巨匠”の異名でマニアックな 映画ファンたちの注目を集めるなかでの

来日記者会見の席であった。

1時間の会見で、たった3問の質疑応答は超珍しいケース。

1問に20分くらいかけて答えるのだから、

「さすが長回し!」と呟く声もちらほら…

事故死さえなかったら、 現在も映画を撮り続けていたに違いないよなあ…

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