1967年 フランス映画 ロベール・ブレッソン監督
(Mouchett)
きれいなドレスは岸辺に置き去りにされたままだよ、
水面を流れるオフィーリアにさえなれないんだね・・・
ブレッソンは何故ここまで冷酷になれるのか。
いや、彼はひたすら見つめ続けるという勇気を持っていただけなのか。
狩猟者に執拗に銃弾を浴びせられながらも、
必死で逃げてゆく兎。
もう逃げ切れるかと思いきや、
ぱたっと動かなくなる、
暗示的な滑り出し。
貧しい暮らしに耐えながらも、
鋭い眼差しに力を秘めた少女ムシェット。
病身の母、
生後半年も経たない赤児、
粗野な父親。
学校でも孤独感をつのらせている。
ある日、彼女の人生をさらに
揺るがす事件が起こる。
なぜ?なぜ!と叫びたくなるが、声が出ない。
すさんだ暮らしで
無垢な魂が捨て鉢になってしまったのか。
それとも、誰でも良いから触れて欲しかったのか。
映画史上に遺るラストは、
お伽噺よりこわいが、
決して儚くはない。
ブレッソンの見せかたの巧みさに、しばらく動けない!
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