1969年 日本映画 大島渚監督 日の丸の如く映し出された白地の黒丸から、 赤い文字が八方に伸びている。よく見ると監督名、 スタッフ名、キャスト名である。 血の寄せ書きのように見えてくる、タイトル・バック。 日の丸が血を流している? 実在した当たり屋一家をモデルに大島渚が描き出すのは、 傷痍軍人を理由に職につかない父と、事実婚の女、 前妻との長男、女との間に生まれた次男。 タイトルの”少年"はいつも詰め襟を着せられているが 中学生には見えない長男。実際に孤児であったという 10歳の阿部哲夫が堂々たる存在感で演じる。 卑劣な父親に渡辺文雄、監督の美しき妻・小山明子は "掃き溜めの鶴”に見えないよう毳けばしく装ったか。
パートカラー手法、少年の出奔シーンの幻想的な処理など、 束の間の現実逃避を観客にも差し出す大島監督。 少年は車の前に飛び出すことにも、 相手との交渉にも慣れていく。 切れ長の一重瞼の下の鋭い眼から、 一筋の涙が流れたとき、 人生という重荷に、一区切りがついたのだろうか…
寒々しい余韻を残す問題作である。
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