2003年 スウェーデン映画 イングマール・ベルイマン監督
(SARABAND)
枯葉に縁どられた、老いた嘗ての夫婦。
“ア”の項で紹介した『ある結婚の風景』('74)の続編であり、
イングマール・ベルイマンの遺作。
エルランド・ヨセフソンとリヴ・ウルマンが芳醇たる演技を見せる。
80代で隠遁生活を送る男のもとを30年ぶりに訪ねる別れた妻。
出くわすのは最初の妻との間の息子、その娘。
4人の男女が奏でる愛憎劇、
ベルイマンでなければあり得ない組み合わせではないか!
あたかも舞台劇のように台詞が飛び交うなか、クロースアップが怒涛の如く迫りくる。
そして、心の琴線を掻き鳴らすのはチェロの官能的な音色。
「自らの人生は女たちとの人生」と言って憚らないベルイマンは
生涯に5回の結婚歴があるが、
別の形で彼と公私ともにパートナーシップを築いていたのが、リヴ・ウルマンである。 彼女はまさしく60代にして最後のミューズを努めあげたわけだか、
インタヴューでの「イングマールは本作で初めて、
理解し合おうと手を差し伸べたのではないか」という言葉は胸を打つ。 ベルイマン作品『叫びとささやき』('73)で始めた”サ“から始まる手持ちの映画は、
彼の遺作で幕を引こう。
次回から“シ”に移るが、意外にも126作あり、選ぶのが大変そう!
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