1967年 フランス・イタリア合作映画 ジャン=ピエール・メルヴィル監督
(Le Samourai.)
アラン・ドロンほど“死”のイメージと結びついた美男スターが存在しただろうか。
ラスト・シーンでの死はもとより、
あとは死刑台へまっしぐらという暗示の作品もあり、
主演作で生き続ける役のほうが思いつかない。
J.P.メルヴィルは語り過ぎず、視覚に訴える可能性を追求した映画作家。
このうえなくフォトジェニックなアラン・ドロンを好まないはずがない。
薄暗く孤独なアパルトマンの一室に金属的な小鳥の声だけが響き、
煙草の煙とともにドロン扮する殺し屋が目覚めるファースト・シーンから、
最初の台詞を聞くまで確か10分以上ある。
その静けさをもたせるのが、ドロンの美しさなのである!
トレンチ・コートをはおり、
ボルサリーノ・ハットの鍔(つば)を両手の指で整えるドロン。
ああ、いつまでも観ていたい!
添え花で注目したいのは、娼婦に扮した当時のアラン・ドロン夫人ナタリーより、
ジャズ・ピアニスト役のブラック・ビューティ、カティ・ロジェ。
今ならハリー・ベリーというところか。
“美男薄命”は無いらしく、ドロンは長命を保っているが、
本作にインスパイアされた1999年ジム・ジャームッシュ作品
『ゴースト・ドッグ』( ”コ“の項で紹介)を、ご本人は観たのだろうか。
J.P.メルヴィル作品は”ウ”の項で『海の沈黙』
”カ”の項で『影の軍隊』を紹介してあるので、どうぞ参照あれ。
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