1984年 日本映画 寺山修司監督
『さらば箱舟』(Farewell to the Ark)
半紙に書かれた言葉、言葉、言葉・・・。
名詞ばかり連なる寺山修司の短歌を想起させられる。
寺山の映画作品は短編も含め随分と観たが、本作が遺作である。
貞操帯という道具。
女性の人間性を悉く侵害するグロテスクな代物。
艶姿が似合う女優・小川真由美が、坊主刈りに貞操帯装着という、
ショッキングな姿で宿命の女・スエを演じる。
憤懣を眼光に秘めた山崎努、男の獣性全開の原田芳雄。
この三つ巴、おどろおどろしく、狂おしい。
本作は確かに劇場で観た筈であるのに、パンフレットが見当たらない。
騙し絵のような127分を反芻し、山崎努扮する捨吉の如く、
記憶を操作されてしまったのではないかと怯えるしかない。
G.G.マルケス作品の映画化は『エレンディラ』(’83)『コレラの時代の愛』(2007)を観たが、
本作『さらば箱舟』はかなりの別ものか。
カラー・着色映像・黒白映像が交錯するループのストーリーは、
捨吉とスエの逃れられないさだめを見せつける。
ラスト・シーンは寺山にとっての死後の世界なのだろうか・・・
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