1990年 英・仏・蘭合作映画 ロバート・アルトマン監督 (Vincent &Theo)
アートだいすきの身ゆえ、 画家の人生を描いた多くの映画を観てきたが、 作品数に於いて、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホを凌ぐ画家はいない。 貧困・悲惨・悲哀と劇的な要素を挙げて 韻が踏めてしまうだけでなく、 やはり映画作家なら、 あの色彩とタッチを映像化してみたいと思うのだろう。 しかしながら、ジャズと育ち ”アメリカ”の群像劇を創り続けたロバート・アルトマンが、 ヴィンセントと弟テオの物語を撮るとは意外だった。
公開時にちいさな試写室で観たが、流石はアルトマン、出だしが揮っている。 このファースト・シーンだけで他の”ゴッホ映画”に思いきり差をつけているから、 どうか、お見逃しなく!
薄暗い部屋で、浮浪者のような身なりで絵を描くヴィンセント。 きちんとした服装で窓辺に立つテオは、伯父の画廊に勤め、兄を支援し続けている。
アルトマンは群像劇を得意とした映画作家であり、 ”ウ”の項で『ウエディング』(’78)を紹介したので、参照あれ。 エピソードは星の如く散りばめるが、クドクドと説明しない。
ヴィンセントとテオのゴッホ兄弟に関しても、 観客の想像に概ねを委ねたつくりとしている。 人物を描ききることで物語った点が、本作が絵画的な秀作となった所以かも知れない。
ヴィンセントには、当時20代にして天才の片鱗が見えるティム・ロス。 テオには、当時”第二のルパート・エヴェレット”と呼ばれていた ポール・リース。 向日葵の黄色が、麦畑の黄色が、あなたを襲う。逃げられるか・・・?
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