2016年 ベルギー・フランス合作映画
ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督
(La Fille inconnue)
ダルデンヌ兄弟監督の作品は10作品以上は観ているはず。
演技経験のない若者たちを起用し、手持ちカメラを使い、
あたかもドキュメンタリーのように撮った初期作品。
低予算の力強い作品群は、
観客の正義感や人間としての尊厳を呼び覚ます。
今や社会派の映画作家として世界中に名を馳せるダルデンヌ兄弟である!
小さな町の診療所で働く若き女性医師ジェニー。 その働きぶりを目で追いながら、何科なんだろうと、まず思う。 肺疾患の老人や癲癇らしき少年、アルコール依存症女性などなど、 ジェニーを頼り、診療を受ける患者たちはあとを絶たない。 演じるのは、飾らない美貌の持ち主アデル・エネル。 そんなある夜、ジェニーは 時間外にベルを鳴らした患者を断ってしまう・・・。
20代の女性医師の暮らしが淡々と描かれる。 一着のコートを着まわし、ブロンドを無造作に括り、化粧っ気もない。 簡素な食事、恋人など全く見当たらない。 してしまったことのツケを、自らとことん払ってゆくジェニー。
ダルデンヌ作品で暴露されるショッキングな事実は、
何の前触れもなく提示されるため、
「作りもの」であるはずの映画を観ている我々は、
大いにたじろぐ。しかし実際の事件はきっと、
こんなふうに起きるのだろうと、観おわったあとに思う。
そこが凄い。
ミステリー・タッチで語られる、目の離せない社会派劇。 アデル・エネルは本作後も、 セリーヌ・シアマ作品『燃ゆる女の肖像』(2019)ほか、 注目作に出演し、映画界卒業宣言となる。
ストイックな少女っぽさの残る本作に於けるアデルのイメージは、
映画ファンの脳裏に残りつづけるに違いない。
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