1961年 日本映画 増村保造監督
『好色一代男』
井原西鶴の原作を市川雷蔵が演じる。 細面に華奢な体つき、 口を開ければ”おなご”を誉めそやす軽口ばかりの大店のぼんぼん世之介。
けちん坊の父親に女中同然の使われかたをしている地味な母親。 この両親で、まともな息子に育つはずがないと、世之介に同情票あり。 「おなごたちには、おかんのようになって欲しくない、 おなごは大事にせなあかん」 遊女から人妻まで、目に入る女は口説かずにいられない世之介。 何処まで本気? 意外に厭味のない雷蔵の演技のお陰で、ヒョイヒョイと進む物語。
水谷良重、中村玉緒、そして増村監督のミューズであった
若尾文子などなど、衣擦れの音とともに、喘ぐ女たち。
女を愛することを生きがいとしながら、
世之介に愛された女たちには常に死の影がつきまとう皮肉。
殊に、藤原礼子が扮した浪人の後家・お梶の
狂乱シーンに於ける性愛への執着は見どころ。
ブラック・ユーモア満載の悲喜こもごも、
ハッピー・エンディングのないことが見え始め、
赤い腰巻をなびかせての出奔と相成る。
人間同士の色事に飽いた末、
お次は人魚と契るかと想像を駆られるラストも可笑しい。
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