1964年 フランス・イタリア合作映画 ルイス・ブニュエル監督
(Le journal d’une femme de chambre )
少女の腿に這うカタツムリ。 女性用ブーツを抱いて死んだ老人。 ブニュエル・ワールドが炸裂する、モノクローム作品である。
ブニュエルは我が映画人生に欠かせない作家であり、 我がパートナーともども大ファン。 24~25作は観ているはずだが、 まずは”カ”の項で『哀しみのトリスターナ』(’69)、 ”キ”の項で『銀河』(’68)を紹介したので参照して欲しい。 ご本人にはお会い出来なかったが、どのみち質問になど答える気がない、 筋金入りのアーティスト。 著書『INTERVIEW ルイス・ブニュエル 公開禁止令』をご一読あれ。
ジャンヌ・モローの大人のエロティシズムに魅了される本作は、
車窓に流れる田園風景から始まる。
パリからやってきた、モロー扮する32歳のセレスティーヌは、
不感症の中年女当主、精力絶倫の婿、
そして”靴フェチ”の老父が暮らす邸に小間使いとして奉公することに。
屈折した家族のそれぞれを観察しながら、
不敵にかわしていくセレスティーヌ。
そのうち、世慣れした彼女の人生を変える、
陰惨な事件が起こる・・・
愛国者の名を借りて歪んだ欲望を満たそうとする人間が、 きっと存在した時代なのだろう。 シリアスな悲劇のプロットをお涙頂戴に強調せず、 フェティシズムのほうを際立たせるブニュエル。 絶倫婿に扮したミシェル・ピッコリが、 老女のメイドとまで懇ろになりたがるくだりも嗤える。
大きなビスケットをかじりながら振り向くジャンヌ・モローの表情が忘れられない。
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