1952年 日本映画 新藤兼人監督
1945年8月6日、広島に原爆が投下されて7年後、 日本映画として初めて原爆について描いた作品。
原爆により父母と妹を失った乙羽信子演じるヒロインは、 5年ぶりに広島の土を踏む。 未だ少女っぽさの残る乙羽信子の白いつば帽が、 瓦礫のなかに佇む花のよう。
被爆で子を産めない身体になり助産婦をしている親友とその夫、 焼けただれた顔で物乞いとなっている嘗ての使用人、 そして、施設で育っている彼の幼い孫息子に会うことになるヒロイン。
シーン転換のセンスが光る。 あっ、次にこうなるのか、という具合。 二度と起こしてはいけない悲劇を、 ひとりの若い女性のたった三日間の旅として見せてゆく。
大上段に振りかぶらず、パーソナルに描くストーリーテリングが流石。
”百萬弗のゑくぼ”と呼ばれた乙羽信子とこの作品ごろから愛人関係となり、
四半世紀ほど経った’78年に結婚、乙羽が’94年に亡くなるまで
添い遂げることとなった新藤監督。
戦争を生き抜き、亡くなる前年まで映画を発表し続け、
2012年100歳没。
インディーズ魂にあふれた作品群は、永遠に色褪せることはない!
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