1949年 アメリカ映画 ジョン・フォード監督 (She Wore a Yellow Ribbon)
亡き最愛の祖母は、マーサ三宅の母であったのだが(笑)、 洋楽に疎かった。 明治の終わりに生まれ、若くして満州に渡った苦労人であり、 祖母との想い出に登場するのは、時代劇と懐メロのみ。 祖母の口からすべり出た洋楽と言えば、 本作『黄色いリボン』のテーマソングだけ、それも片言の歌詞だったっけ。 それほどに、このお世辞にも”カッコイイ”とは言えないテーマソングは、 日本人の心にも浸透していたのだろう。
ジョン・フォードの”騎兵隊三部作”のうち、唯一のカラー作品であり、 その意図はタイトルにも見てとれる。 ジョーン・ドリュー扮する少佐の姪オリヴィアが 髪に付けている黄色いリボンを意味しているからである。 退役間近の大尉に扮するジョン・ウェインは、傍観者的な部分も担い、 フォード作品に於ける他の西部劇とは少し異なる立ち位置。
何十年ぶりに観なおし、改めて撮影の凄さに唸る。
馬の走るシーンの迫力、72年まえの作品だからねえ!凄すぎる。
西部劇で女性が演じる花形は、酒場女(娼婦)であるが、
本作では堅気の女性しか登場しない。
オリヴィアと彼女の叔母(少佐夫人)に扮した
渋い脇役ミルドレッド・ナットウィックであり、
オリヴィアの行く末を示唆。
闘いと略奪が繰り返され、
現在の文明社会があることは否定しようがないが、
任務を遂行した男たちの陰に居た女たちの姿、
秤にかけて愛する男を見極め、ささやかな倖せを築いてきた
女たちの狡さが垣間見える、フォード異色の西部劇ではないだろうか。
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